RAISING法によるBLVクロナリティ解析サービス
ゲノム中のプロウイルス挿入部位を増幅する技術であるRAISING法を応用し、北海道大学、国立感染症研究所、岩手大学と伝染性リンパ腫ウイルス(BLV)のクロナリティ解析技術を開発しました。
BLV(牛伝染性リンパ腫ウイルス)について
BLVは地方病型牛伝染性リンパ腫(EBL)の原因となるレトロウイルスであり、感染牛のうち5%がEBLを発症すると言われております。
EBL 発症牛は淘汰の対象となり、 牛乳や食肉の生産ができずに全廃棄となります。EBL は発症までに3年以上かかるため、全廃棄になると牛の売却利益が失われるだけでなく、それまでに要した膨大な経費や時間が無駄になります。牛伝染性リンパ腫は平成10年に届出伝染病に指定され、その後発生頭数、感染率は急激に増加しており、その経済的損失は計り知れません。
本サービスでは、EBL発症予測法として、RAISING法を用いて網羅的にBLVプロウイルス挿入部位を増幅し、BLV 感染細胞のクロナリティ解析を行います。
RAISING法とは
“Rapid Amplification of Integration Site without INterference by Genomic DNA contamination”の略で、国立感染症研究所とファスマックの共同研究により開発したプロウイルス挿入部位を増幅する技術です。
RAISING法はプロウイルス配列特異的なプライマーを用いて、PCRベースでサンプルを調製することができます。煩雑な作業を要しないためサンプル調製において人為的誤差がなく再現性の高い結果が得られます。
RAISING法を用いたBLVクロナリティ解析の有効性について
クロナリティ値(がん細胞のクローン増殖度合いを示す値、Cv) をマーカーとして EBL 診断を試みたところ、感度 87.1%、特異度 93.0%と非常に高い精度で EBL を鑑別することができました。一方、プロウイルス量を EBL 診断のマーカーにした場合は、感度 44.6%、特異度 67.2%となり、EBL 発症牛と未発症牛を見分けることができませんでした。 また、 EBL 発症牛は未発症牛と比べてCvが高い傾向にありました。
EBL の実験モデルであるヒツジを用いて、BLV 感染からリンパ腫発症までの間、経時的に「Cv」と「プロウイルス量」を解析し、各マーカーによってリンパ腫の発症を予測できるかどうかについても検証しました。 Cv はリンパ腫を発症する前に、プロウイルス量よりも早いタイミングで上昇していました。このことはCvがリンパ腫の発症予測マーカーとして有用であることを示唆しております。
本研究成果は、2022年10月13日に国際学術誌であるMicrobiology Spectrumにて公開されております
T.Okagawa, H.Shimakura, S.Konnai and M.Saito et al, Diagnosis and Early Prediction of Lymphoma Using High-Throughput Clonality Analysis of Bovine Leukemia Virus-Infected Cells
解析サービスプランについて
- ①サンガーシーケンスプラン
- ②次世代シーケンス (NGS) プラン
ご依頼方法について
①サンプル準備
精製済みのゲノムDNAを1サンプルあたり200 ng /μl以上、10 μl以上を目安にお送りください。ゲノムの品質が解析結果に影響することがございますので、クオリティチェックを実施いただきますようお願いいたします。
※必ずRNase処理をしていただきますようお願いいたします。
②サンプル送付
専用のオーダーシートを以下よりダウンロードしていただきます。
※オーダーシートのダウンロードはこちらから
必要事項をご記入いただき、まで送付をお願いします。
またオーダーシートの印刷物ならびに電気泳動写真をサンプルに同梱の上、以下の宛先まで冷蔵便でお送りください。
送付先
〒243-0021
神奈川県厚木市岡田3088 ケーオービルA棟4階
株式会社ファスマック NGS担当 宛
TEL 046-281-9909
③解析受注
サンプルを受領いたしましたら、解析受注のご報告メールをお送りいたします。
④サンプルのクオリティチェック
蛍光定量装置にて濃度測定を行います。明らかに基準に満たない場合には、お客様へ連絡し、以降の作業について進めるかどうかご連絡差し上げます。
⑤サンプル調製
RAISING法にてサンプル調製を行います。蛍光定量装置にて濃度測定を行い、キャピラリー電気泳動でサイズ確認を行います。不良の場合には再度サンプル調製からやり直し、それでも不良の場合にはご相談の上、解析を中止とさせていただきます。この場合、料金はサンプル調製までの費用をいただきます(50,000円)。
⑥シーケンス
ご選択いただいたプランに基づき、シーケンスを実施いたします。
⑦データ納品
データは生データでご提供いたします。サンガーシーケンスプランの場合はメール、NGSプランの場合にはUSBメモリにて納品いたします。
注意事項
①サンプルについて
※以下の方法を参考にクオリティチェックをお願いします。
- 吸光度計により、A260/A280≧1.6 、A260/A230 ≧1.6であることを確認
- アガロース電気泳動により、分解がないことを確認。右の電気泳動の画像はウシの血液(白血球)抽出したDNA 3検体を1%アガロースゲルで電気泳動した写真。Aはクオリティに問題はなく、B、Cは、分解が見られており、クオリティに問題があると判断。
※解読長はサンガーシーケンスプランの場合は600-700 bp、NGSプランの場合は300bpとなります。
②解析結果について
- プロウイルス配列中に予期せぬ変異が入っていた場合、解析結果が得られない場合がございます。
- NGSプランでは1度の解析で複数の挿入部位を検出することが可能ですが、存在する挿入部位全ての検出を保証するものではございません。
- 本解析サービスは診断結果を保証するものではございませんので予めご了承ください。