次世代シーケンス解析(MiSeq) アンプリコンサンプル調製時におけるPNAの利用について
次世代シーケンサーの登場によって大量のデータが比較的手軽に入手できるようになりました。機器の進化によってサンプル調製というこれまでと変わらないウェットな作業も簡素化が進んでいます。しかしながら、あくまでも「簡素化」であり、精度についてはむしろより高いものが求められるという認識がこれまでのMiSeq運用実績からの判断です。つまり、大量のデータが得られるので、初期条件(サンプル調製)が非常に重要であるとの認識です。
弊社では植物の葉に存在する微生物の群集構造解析を目的としたアンプリコンサンプルを調製する際に、植物のミトコンドリアおよび葉緑体由来の増幅を抑制させる目的にPNAの添加を行い、良好な結果を得ております。
下図は4サンプル単位で条件検討した結果です。
- Ct1-Ct4 PNA添加無し
- Mt1-Mt4 ミトコンドリア用ブロックPNA添加
- Pl1-Pl4 葉緑体用ブロックPNA添加
- PM1-PM4 ミトコンドリア用と葉緑体用ブロックPNA添加
濃い紫がミトコンドリア由来の増幅産物のリード、薄い紫が葉緑体由来の増幅産物のリードで、PNA添加による明確な増幅抑制効果がわかります。
ミトコンドリアと葉緑体に対するブロックPNA 添加効果の検証結果
PNAに利用は微生物群集構造解析だけではなく、野生生物の糞便解析による餌生物の推定にも利用しております。具体的な方法としては糞便から抽出したDNAをサンプルとして、日本バーコードオブライフ・イニシャチブで動物のバーコーディングに用いられているCOI遺伝子の増幅を行い、MiSeqで解析を行うことによって餌生物の推定を行います。
この場合でも植物サンプルにおけるミトコンドリアと葉緑体由来の増幅同様に、ホスト生物由来の増幅が大きな問題です。PNAの添加を行わないと取得データの90 %程度がホスト由来の増幅産物のデータとなってしまうのですが、PNA添加を行うことによって最大で10 %程度に抑えることができ、より解像度の高い餌生物の推定を行うことができています。
【出典】
Derek S Lundberg, Scott Yourstone, Piotr Mieczkowski, Corbin D Jones & Jeffery L DanglPractical innovations for high-throughput amplicon sequencingNature Methods 10, 999-1002(2013)